2018年 08月 14日
【場所】天シアターやまんね 【芝居】以下11チームの芝居 ■■【公演実施感想】 8回目のやまんねフェス。やまんねOpen8「公演っぱ」終わりました。 1日目は暑さの中。二日目は雨音の中。皆さんお疲れ様でした。楽しめましたか? 11団体という出場者にも恵まれ、打ち上げのビールも格別でした。
今年まず感じたのは、「継続は力なり」でした。 蓋を開けると、それぞれの団体がそれなりに確実にレベルアップしていて、それだけで心が軽くなるのを覚えました。もちろん初めて参加した劇団もあったのですが、ここに出場する以前に私とは芝居づくりを通しての何らかの関係があり、その時と比較すると、皆さん確実にかなりの進歩が見られていました。 スペースも限られているので、少々荒っぽいですが、今回は出場順にコメントしてみます。
例年、農工現役の芝居はいつものトップの指定席。まずは若者のエネルギーでフェスの開幕を飾ってもらっています。しかし今年の芝居が一番観客に入っていたように思う。伸び伸びとした役者の楽しそうな演技が、観客の心に自然に入ってきた。3年生の役者自身の納得感が心地よく舞台を占めていました。いい感じです。これは、農工の芝居、というかコイケ芝居の変化の兆しなのだろうか・・・? 上演2 劇団ミドコロ (鉄びん0号/作「男の門出」) 今回は敢えて、おじさん二人の芝居に挑戦してもらいました。世の中の不純なものを一杯経験した中年のおじさんというものは、それだけで演劇的にはかなり魅力的な材料です。ここのところ、左脳の殻を破ろうと試みている根岸伸好氏と、長い演劇経験を経て、あらためて役者の楽しさを実感し始めた千葉克文氏との二人芝居。知性のかけらもない、乱暴で感情的なヤクザというキャラを演じることで、二人とも、少なくとも新境地の入り口に立てたのではないだろうか。今後が楽しみです。
上演3 劇団みなみ (畑岡完紀/作「双眼鏡」) 3回目の参加ですが、ここも今年の芝居が圧倒的に面白かった。特に、台詞の大きさの差、テンポの差が出た二日目の方がずっと出来が良かった。ただ練習の仕方ではもっともっと面白くなるはず。「トボケ」が演技ベースになっていて、手触りはとてもいい感じなのだが、二人とも(台詞を入れたばかりなのか?)まだまだ頭の演技が先行していたように思う。その分だけ観客に今ひとつ落ちてない。もったいない、もったいない。 上演4 劇団みどり (鉄びん0号/作「幸せの黄色いハンカチ」) 少しずつ進化しつつある劇団みどり。今回、京子氏は比較的楽な設定。例年より楽に演技出来ていた。で、気づいたのだが、彼女は「天性の喜劇役者」なのかもしれない。もちろん本人は意識していないのだが、現実の生活ではかなり固い部分があり、こちらの演劇的な要求にはなかなか素直に応じてくれないところがある。しかし一旦舞台に上り、本人の流れに任せてみると、自然にカラダが動いてそれなりに「魅せてしまう」のだ。しかも笑いまで取って・・・。
上演5 劇団はなまる(劇団はなまる/作 「アリスの不思議な国」) やまんねのリハで顔を会わせて、すぐに二人とも、昔、浦和南高校の若林医院で治療した人たちだと判る。当時と比べ演技が格段に良くなっている。若干間を均等に取り過ぎていて、エネギーが落ちる感は否めなかったが、目の張りも良く、外への充分な集中が感じられた。台本をもう少し練り直し、観客目線(俯瞰する視点)をいれて、骨太に大きさや速度の差を意識した演技に徹すればあなどれない芝居になったと思う。来年も是非見たいものだ。
上演6 劇団イコダコイ(鉄びん0号/作 「幸せの赤いハンカチ」) 長い芝居経験に裏打ちされ、二人の掛け合いはいつも安心して見てられる。(たとえ千葉が台詞忘れても) 特に今回はイコダが素晴らしかった。老女の演技が今ひとつ自分のものになっていない本人の不満(?)を感じつつも、演技の安定感は、やはり今回のすべての参加者の中で出色であった。芝居の線をいつも感じながら、それを壊さずに、トボケを相手にぶつける演技は見ていて気持ちよかった。喜劇なのだが、あえて笑いをとらずに、観客の心に染みこませる台詞は天性のものかもしれない。逆にアチャラか喜劇を演らせたい衝動に駆られる。
上演7 劇団Q(菅原なるみ/作 「アイとシンデレラ」) 劇団Qとしては初めての参加だが、個別には長い付き合いの人もいる。今回の参加は、劇団Qの芝居づくりの新しい挑戦だった。妻沼にある老舗の劇団で、今までに数々の素晴らしい舞台を創っている。しかし私が見る限り、左脳中心の演技が目立ち、役者の有機的な繋がりに欠けている面があり、それがもう一つ深い世界を創れないでいる。もったいない限り。それが今回の出演のキッカケであった。数回に渡る夜のやまんね練習を経て、本番は、右脳全開とまではいかないまでも、いろいろ収穫が多いい舞台だったように思う。ぜひ次の本公演に生かしてもらいたいものだ。私は私で、ここからなら本格的な右脳練習が出来るのに、などと臍を噛んだ。
上演8 劇団月のほ(鉄びん0号/作 「芝居嫌い 3」) 尚美学園大学の舞台表現学科の学生たちで、私の授業の受講生。2週間前に別役作品で本番を終えたばかり。1週間前に急遽台本を提出しやまんねに出演することになり、私の家に泊まりながら、本番前日一度だけ数時間の演出をつけた。若い柔らかい感性は、軽く楽しみながら簡単に舞台をモノにしてしまった。しかし演劇専攻生としては、この「軽さ」を「深さ」にするすべをどこかで身につけなければならない。それがこの演劇専攻生たちの課題か。
上演9 劇団稽古しようぜ!(よしとみなる/作 「渇望」) 久し振りの成美氏の一人芝居。集中力ある演技で観客を惹き付け、魅力的な舞台になった。心から演じることが大好きな彼女から発するオーラが劇場を覆った。しかし自分で考えた動きや演出に捕らわれている感が目立ち、もう少しじっくりと「渇望」する主人公の心のエネルギーを感じさせてもらいたかった。演出はあくまで補助で、大事なのは役者の思いなのだから。しかしもちろんそれ以上に、久し振りの彼女の演技、やはり光るモノがあった。
上演10 劇団トラアナ(阿部哲也/作 「公園関係」) 教員のもつ独特な強烈な左脳を毎年少しづつ少しづつ取り除きながら、今年で5回目の顧問芝居。しかし今回は芝居の線がしっかり際立ち、特に常連組の3人は左脳を2番手に抑える演技に近づいたように思った。新人二人もそれに引っ張られながらるいい感じの演技だった。<「台詞を相手に入れる」開かれた演技>を生徒達に教えるには、理屈では無く、演技という体験の中で掴むのが早道だと考えて始めたこの試み。そろそろイケますかね。今回落ち着いてシゴク時間が取れなかったので、新人の二人には申し訳ない気持ちで一杯です。なのでお二人は今回はあくまでも「出発」です。是非次の機会を・・・。
上演11 劇団天末線(まさひろ/作 「犀を蹴る」) すっかりおなじみになった「まさひろ」の中編。まさひろが作家として少しずつ力をつけてきたことは嬉しい限り。しかしその上で注文をつけてみる。彼の台本は、キツイ世界をキツク書いている感が否めない。直接話法だ。遊びがない。ギャグの部分的な笑いではなく、「芝居の構造」の構築からくる余裕と言ったらいいのか、なんとなく漂う「ゆるさ」や自然に零れる「ユーモア」が出てくると、グッと質が上がる気がする。 新加入の黒沢さんの演技がいままで天末線にはないものだったので新鮮だった。時間が許せばもっと重要な役で一度じっくり見たいと思った。
by tetsubin5
| 2018-08-14 15:21
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